俺様魔王の甘い口づけ
「でも、あんたが今まで殺してしまった悪魔だって、人間だって同じように誰かに大切に思われてる人だったり悪魔だったりするのよ」
押さえていたタオルを外し、ガーゼを当て包帯で巻いていきながら話す。
ルイの事だから途中でもう平気だとか言って話をさえぎったり強引にどこかに行ったりするかと思ったけど、大人しく手当されている。
そして、私の話を黙って聞いていた。
不思議だ。
「だから、簡単に命を消してはいけないの」
「……」
「言っとくけど、あんたもだからね。さっきも言ったけど。あんたにだってあんたを大切に思ってくれる人は絶対にいるんだから。だから、簡単に死んでもダメなのよ」
「俺様を大切に思う者…?そんな者、いるわけがなかろう」
色を失った瞳。
なにも信用しない、拒絶した瞳。
ああ、悲しい人なのかもしれない。
大切にされていることを気づけない。
そういう気持ちを感じたことがない。
「…なら、私がいる。言ったでしょ。あんたに生きててほしいって」
どうしてこんなことを言ってるんだろう。
大っ嫌いだと、姿すら見たくもないと思ってたのに。
それでも、ルイが死んでほしいわけじゃない。
生きていてほしいと思う気持ちにウソはない。
「お前みたいなバカな人間…初めてだな」
ルイが、そう呟いた。