俺様魔王の甘い口づけ
そんなこともなく、ルイは何事もないように前を進む。
予想外の展開に、私は間抜けな顔をしていることだろう。
命拾い、したのかな。
そんなことを思いながらルイの後を追った。
広間に行くと、ちょうど食事の用意ができたところだった。
「ルイさま、芽衣子さま、お待ちしておりました」
丁寧に頭を下げたハンスが迎えてくれる。
私は空笑いを浮かべ、席についた。
結局、私は負けたみたいだ。
悔しい。
「おい」
「はい、ルイさま」
「お前は、これが読めるか?」
ルイがハンスにさっきの紙を見せる。
ハンスがそれを覗き込み、首をかしげる。
「いえ、初めて見ますが…。それは文字なのでございますか?」
「そうか。…チッ」
あからさまに不機嫌そうに舌打ちをする。
なんだ、やっぱり気になってんじゃん。
残念ね、ハンスにだって何を書いたのか教えていない。
「ほら、言ってみなさいよ。教えてくださいって」
「煩い」
「ほらほら」
私はにやにやしながらルイに詰め寄る。
ルイは、ギロリと私を睨みつける。