めぐりあい(仮)
「まさかお前が牧瀬と知り合いとはな」
「こっちだって、店長が知り合いだなんて」
レシートをもらい、
財布にしまう。
「帰り、大丈夫か?」
「うーん、何とかします」
席に戻り、蓮哉を立たせると、
ふらつく彼の腕を持って外へ。
また来いよ、と言う店長の言葉にだけは、
まともに返事をした蓮哉。
「っていっても、どうするかな」
こんなに酔った蓮哉を1人で
帰すのは無理だし、
家も分からないし、
タクシー呼んでも寝ちゃったら
意味ないし。
どうしよう。
ぐるぐる考えた所で、
ふとひらめいた。
「千秋さん、すいません」
「別に。丁度近くまで来てたから」
練りに練った末、
千秋さんに電話をかけた。
家を教えてもらうはずが、
迎えに来てくれるとかで。
後部座席に2人並んで乗り込み、
蓮哉の家まで連れてってもらうことに。
「にしても、蓮哉がこうなるなんて珍しいな」
蓮哉はあたしにもたれかかって、
ぐっすり眠ってしまった。
規則正しい寝息に、
あたしも睡魔に襲われそうになって。
「ちょっとイライラしてたみたいで」
「それも結構珍しいけどね」
千秋さんは丁寧な運転で
あたしたちを運んでくれる。
蓮哉と同じ歳のはずなのに、
格段と大人っぽいな。
「着いたよ」
「ありがとうございます」
蓮哉を起こし、
何とか外に出る。
「本当にすいませんでした」
「今度の休み、海楽しみにしてるから」
「はい!」
千秋さんはクラクションを軽く鳴らし、
ゆっくり去って行った。
「蓮哉、部屋どこ?」
着いてみて思ったこと。
ここ、結構あたしの家と近い。
だって目の前のスーパー、
あたしの家の行きつけだもん。
「鍵は?」
「ポケット」
はい、どうぞ。
というように両手を上げる。
「どこのポケット?」
「ズーボーン」
「はあ?自分で取ってよ」
「妃名、取って」
酔ってることをいいことに、
意地悪が更にグレードアップ。
そしてそれに従うあたしは、
どうしてもばか。
「お邪魔します」
鍵を開けると、
蓮哉はあたしを置いて、
中に入って行く。
どうしようか迷ったけど、
心配だったからあたしも中に入ることに。