犯罪彼女
ああ、これだけじゃ伝わらないか。

それじゃあ少し説明をするとしよう。



入場まで後5組のカップルを待つのみとなった時、いきなり左手を引かれた。
私は大抵すーちゃんの左側にいるから、手を引いたのはすーちゃんではない。

驚いて左を見ると、見知らぬ肥満体型の汚らしい男が私の手を掴んでいた。

突然の出来事になら対応するくらいわけないけれど、今回は別。相手が悪かった。

私は思考を停止させたまま男に引き寄せられ、列から出た。

だけどすーちゃんも負けてられない。
私よりも幾分か鈍いすーちゃんが私の右手を掴む。

しかし男はどこからか包丁を取り出し、私の首もとに当てた。

「俺の女に触るな」

デブが言う。誰がお前の女だ。
悪態をついてやろうと思ったけれど、鼻につく異臭のせいで言えなかった。吐き気を催す臭いだ。

すーちゃんは舌打ちをしながら右手を離した。不潔な奴に触られてしまった私のショックは大きい。いつもと違う私の様子に、いつものような動きは期待できないと考えたのかもしれない。

ちなみにその考えは正しい。



私はそのまま、デブに引きずられて水族館の中へ入っていった。

刃物を持つデブに、すれ違う人は青ざめながら道を開けていた。

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