【完】狼様の最愛。
「……人間?」
急に山から振って来た熊。
それが、クン。
「お前、大丈夫かよ……?」
「平気平気、しょっちゅうだからさー。」
当時の俺は、確か十八歳。
ちょうど今年で、十年も前の話になる。
「へぇ、護って言うんだ! 俺はクンだよ。」
クンは……なんというか、全面的にアホだった。
いつもヘラヘラとしてて、よく崖から落ちて来たり、川に溺れそうなってたり、溝に嵌って抜け出せなくなっていたり…………。
でもお人好しで、バカ正直で、今すぐにでも人を襲いそうな熊のくせに、よく俺達人間の真似事をしてた。
「クンが人間だったら良かったのにな。そしたら、もっと二人で楽しいことが出来るのに。」