口の悪い、彼は。
 

「知夏?私たちもチャペルに向かうわね?……って、やだ、小春!?まだここにいたの?もうみんなチャペルに向かってるわよ!」


そっと部屋に入ってきて、私の姿を認めて驚いた表情を見せたのはお母さんだ。

ふくよかな体型のお母さんは着物の着付けの仕事をしていることもあって、着物をビシッと着て決めている。

ちなみに私が着ているのは、胸の下で切り返しリボンの付いている綺麗なワインレッドのパーティードレスだ。

着物は気持ちもピシッと引き締まるから嫌いじゃないんだけど、今日は動きやすさを選んだ。

ただ、足元は普段は履かないハイヒールだから転けないように気を付けなきゃいけないけど。

結構ヒールがあるものだけどデザインがすごくかわいくて買ったものだ。

千尋に見せびらかすと「そんなもの履くやつの気が知れねぇ」なんて言われてしまって、「彼女のオシャレをけなさないでよ!」と女心の全くわかっていない千尋に怒ったことは言うまでもない。

……鼻で笑われてしまったけど。


「えっ?もうそんな時間?じゃあ、お姉ちゃん、喜多村さん、私行くね!」

「あっ、小春」

「えっ?」

「ありがとう」

「?うん!」


何でお姉ちゃんが「ありがとう」なんて言ってきたのかわからなかったけど、私は笑顔で頷いた。

そして、お母さん、お父さんと一緒に、チャペルに向かったのだった。

……ちなみに、お姉ちゃんとバージンロードを歩くことになっているお父さんはガチガチに緊張していた。

 
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