口の悪い、彼は。
ふたりが結婚するということを聞いたのは、1年ちょっと前のこと。
千尋と付き合い始めて1ヶ月ほどが経った頃だった。
普段はあまり感情を表に出さないお姉ちゃんなんだけど、その時見せてくれたのは幸せオーラに包まれた笑顔で、そんなお姉ちゃんのことを見つめる喜多村さんの幸せそうな表情も素敵すぎて、私はつい感極まって泣いてしまった。
そんな私を見てふたりはきょとんとしていたんだけど、とにかく嬉しくて仕方なかったんだ。
ふたりの幸せそうな雰囲気を近くで感じていると、自然と私にも結婚願望なんてものが湧いてきてしまう。
もちろん、今結婚のことを考えてしまうと、出てくる相手は千尋だ。
でも千尋からは“結婚”なんて言葉は一回も出てきたことなんてないし、何よりも仕事第一の人だから、千尋と結婚するなんて夢のまた夢なんだろうなと思ってしまう。
考えたくはないけど、結婚という言葉が出てくるより前に……ということもあり得る話なのだ。
千尋は35歳になっていい歳だし、結婚のことを考える歳なんじゃないかなとは思うんだけど……まぁ、こればっかりは千尋にしかわからないことで。
そもそも、あの千尋が世間体を気にして、結婚を急ぐようなことはないだろうから、結婚のことを考えている可能性は低い気がする。
私もいつの間にか結婚を考える歳になったんだな~、と思った時、部屋の扉がかちゃっと開いた。