口の悪い、彼は。
 

「……ねぇ、小春。まさか誰にも言えないような恋愛してるの?」

「!!やっ、それは違う!けど!」

「ほんと?」

「うん!変な関係とかじゃないから!……ちゃんと、付き合ってる」

「それならいいんだけど……俊(とし)くんも知らなそうだったから、何でかなって思ってたの」

「!そのこと、喜多村さんに言った!?」

「ううん。普段は私よりも近くにいる彼が知らないなら、わざわざ私から言うことでもないでしょ?」

「そっか……、良かった」


お姉ちゃんの言葉に、私はホッと胸を撫で下ろした。

千尋の知らないところで私たちの関係を会社の人に言うのは良くないと思うし、もし言うなら千尋も納得してからの方がいい。

言わないでいてくれたお姉ちゃんには感謝だ。

私はぽつりと、会社の人たちに私たちの関係を秘密にしている理由を言葉に出し始める。


「……彼がね、仕事をする場で騒がれるのが嫌だから、ってあまり周りには言いたくないみたいなんだ。もちろん、それは私もちゃんと理解してるから、大丈夫なんだけど」

「そっか、うん。そういうのって考え方次第だもんね。小春が納得してるならいいと思う」

「うん。……ねぇ、お姉ちゃん」

「何?」

「いつ、気付いたの?」


こけそうになった時はお姉ちゃんとは距離があったし、その時に少しだけ交わした千尋との会話を聞かれたわけではないだろう。

一瞬素に戻っちゃったとは言え、必死に表情も引き締めていたつもりだった。

それなのに、何で気付かれてしまったのだろう。

 
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