口の悪い、彼は。
 

「安心して?ふたりはちゃんと仕事仲間っていう接し方をしてたと思うし、その証拠に俊くんも何も気付いてなかったから。私もこれといって確信を持てたわけじゃなかったんだけど、小春、転びそうになって、真野さんに助けられてたでしょ?その時の小春の表情が安心しきったようなものだったし、ふたりの雰囲気にも何となくだけどピンときたの」


ほんの少しの時間だったはずなのに、雰囲気でピンとくるなんて……。


「さすが、お姉ちゃん……」

「かわいい妹のことだもの。それに」

「え?」

「真野さんも小春のこと、優しい瞳で見ていたから」

「!?」


や、優しい瞳……!?

千尋ってそんな瞳ができる人だっけ!?

いやいやいや!できないでしょ!?

失礼なことを思っているかもしれないけど、今まで見てきた千尋の表情を思い返しても、そんな記憶は私の中にはどこにもないのだ。

驚くに決まっている。


「ううう嘘でしょ……っ!?そんなわけ……っ」

「嘘なんてつくわけないでしょ?ふたりが並んでるところ、すごくお似合いだと思ったの」

「!!」


「優しい瞳」という言葉に加え「お似合い」という言葉まで出てきて、私は驚きを隠せない。

これから先、千尋と一緒にいることができるとしても、そんな嬉しすぎる言葉が聞けるなんてこれっぽっちも思っていなかったから。

確かに今日はおめかしもしているし、普段よりは少しは大人っぽく見えるのかもしれないけど……中身も行動も変わらないのに。

こけそうになる、という失態をしてしまうほどに。

 
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