口の悪い、彼は。
 

「部長ものんびりしたりするんですね」

「あぁ?」

「いや、何となく……家でもツン、じゃなくて、シャキシャキしてるイメージがあったから」

「……あのなぁ。お前、俺をロボットかなんかと思ってねぇか?んなわけねぇだろ」

「あっ。もしかして、部長ってキチッとしているように見せかけて、実は家ではパンツ一枚でぐだぐだと過ごしてるとかですか!?あんまり想像はつきませんけど」


でも人には意外な一面があるっていうし、部長もそうなのかもしれない。

私は妙に納得して、うんうんと頷く。


「っていうか、部長って結婚してるんですっけ?結構いい歳ですよね?貫禄あるしアラフォーくらいですか?」

「……」

「休みの日って何をしてるんですか?引きこもりです?あ、でも意外とアクティブにテニスとかしてそうですよね。部長って」

「ごちゃごちゃうるせぇな。つーか、高橋、どこでそのスイッチが入ったんだよ」

「へ?スイッチ、ですか?」


何のことだろう、と私は首を傾げるけど、部長はそんな私を見ながら、大きくため息をついた。


「……はぁ。俺の話はどうでもいいだろ。鍵閉めるから早く出ろ」

「?」


眉間に深い皺を寄せた部長はすでにオフィスの扉のそばに立っていて、首からぶら下げた社員証兼カードキーを手に持ち、前後にパタパタと揺らしながらめんどくさそうに言い放つ。

ちょっと大袈裟に言ってみただけだったんだけど、パンツ一枚で過ごすっていうの、図星だったのかな。

そう思えば、もっと親近感が湧いた。

そういう風に過ごすスタイルはうちのお父さんと一緒だから。

 
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