口の悪い、彼は。
 

「……自分が自信を持ちたいから、好きだと言ってほしいのか?」

「っ!……そうだよ。私だって、自信くらい持ちたいよ」

「は、馬鹿馬鹿しいにも程があるな」

「……っ」

「……はぁ。そういうことなら、別れるか。俺には付き合いきれない」

「!?」


千尋の冷たい目線が私に突き刺さる。

その瞳にはあたたかさも優しさも一切ない。


「その方がお前もすっきりするんだろ?」

「……何、それ?何でそんなこと言うの?千尋は、私と別れたいの……?比奈子さんと……よりを戻したい、から?」

「はぁ?アホなこと言うな」

「どうせアホだもん!子どもだもん!……“別れる”なんて言葉を簡単に出してくるなんて、千尋は私なんかいなくたっていいってことなんでしょ!?」

「……はぁ」

「!何で、何も言ってくれないの……!?」


私は千尋に、そんなことない、お前のことだけが好きだ、ってそれだけを言ってほしいだけなのに!

千尋のことをじっと睨むけど、その口からは何も出てこない。

ただ、私のことを呆れたように冷たい瞳で見てくるだけ。


「~~っ、千尋のバカ!!!」


私はがしゃんと音を立ててブランコから立ち上がり、公園の外に向かって走り出す。

その後ろを千尋が追いかけてくる気配は全くなかった。

……ほんの少しだけ期待した私がバカだったようだ。

 
< 174 / 253 >

この作品をシェア

pagetop