口の悪い、彼は。
「……そりゃ、そうだ」
メールの内容を読んでみると、何てことはない、月末の締め作業のチェックをしっかり行えという内容と、ある製品の見積もりを明日の午前中までに出して欲しいという内容が書かれていた。
仕事の内容のメールだというのに、文章を呼んだだけで、まるで千尋から直接仕事の話をされたように感じてしまって、胸がきゅうっと締め付けられる感覚に襲われる。
それと同時に、千尋に会いたいという気持ちが膨らんだ。
「はは。バカだなー。私」
ぽつりと呟いた言葉とともに、ぽろりと涙が零れる。
「~~っ!」
どうしよう。
私には千尋を忘れることなんてできないんだ。
千尋が私と別れたいと思っていても、千尋が私のことを好きじゃなくても、千尋が私のことを面倒だと思っていても、私は千尋のことが好きだから。
千尋のツンツンした言葉の裏にある優しさも、不意に見せる魅惑的な表情も、千尋のキスやぬくもりも、忘れることなんてできるわけない。
こうして離れている今でさえ、求めてしまう。
どうしてこの前、すがりついてでも千尋に『別れたくない』と言わなかったんだろう?
もし拒否されたとしても、頑張れば可能性はゼロではなかったかもしれないのに。
日が経てば経つほど、千尋が私から離れていってしまう可能性が高くなるというのに。
……数日間、ずっとずっと、この気持ちが私の中を渦巻いていて、後悔は大きくなるばかり。
オフィスに人がいないことをいいことに、私は思いっきり泣いた。
そして、ようやく落ち着いてきた頃、私はしゃくりあげながらパソコンの画面に向かい、そのメールを閉じた。
次の日の朝、千尋からの仕事のメールを返した。
……最後に、「出張は大変だと思いますが、頑張ってください。あんみつ饅頭を用意しておきます。」という言葉を添えて。