口の悪い、彼は。
 

「あっ、食べる手は止めなくても大丈夫だよ。ふふっ、小春ちゃんって律儀だね」

「え?そんなこと……」

「今日も本当はこうやって突然誘っちゃったから、悩ませちゃったかなと思ってたの。でも来てくれて良かった」

「……?」


安心した表情を浮かべる比奈子さんの言葉の意味がよくわからなくて首を傾げると、比奈子さんがゆっくりと口を開いた。


「あのね、知夏ちゃんから聞いたよ。小春ちゃん、真野くんと付き合ってるんだってね」

「……えっ!?」

「あ、大丈夫だよ。会社では内緒にしてるんだよね?私も誰にも言うつもりはないから。安心して?」

「……」


にこっと比奈子さんが笑いかけてくるけど、いきなり飛んできた比奈子さんからの直球の発言に、私は驚きを隠せない。

何がどうなって、比奈子さんはお姉ちゃんから私と千尋のことを聞くことになったのだろう。


「先週、美都とご飯行ったんだよね?いろいろ余計なこと言っちゃったみたいでごめんね?美都には悪気はないから許してあげて?」

「……わ、私なら大丈夫、ですから」

「そう言ってもらえて良かった。ありがとう。でね、今週の頭にたまたまなんだけど、知夏ちゃんと私たちで仕事の打ち合わせがあって3人で久しぶりにご飯に行ったの。その時に美都が“小春ちゃんに千尋と比奈子のことしゃべっちゃった!”って楽しそうに言ってて。その話を聞いた時に知夏ちゃんがいつもは見せないような表情を見せたから不思議に思ってたんだけど……美都が席をはずしてる時に知夏ちゃん、私に“小春に連絡してもらえませんか”って言ってきたの」

「……お姉ちゃんが、ですか?」

「うん。その時に小春ちゃんと真野くんとのことを聞いたんだけど、知夏ちゃんからは何も聞いてない?」

「はい。何も……」


私は比奈子さんの言葉に、ふるふると首を横に振る。

 
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