口の悪い、彼は。
 



「か、わ、い、いー!」


お姉ちゃんの胸に抱かれている晴日ちゃんのことを、私はキラキラと目を輝かせて見つめていた。

私の斜め後ろにはやっと連れてくることができた千尋もいるけど、その表情にはもちろん笑みは浮かんでいない。

かわいい赤ちゃんを見れば千尋も笑ってくれるかもしれないという淡い期待を持っていたんだけど、見事にはずれてしまった。

でも、かわいい姪っ子に会ってくれたことで私はもう満足していた。

千尋のことは置いといて、今は晴日ちゃんだ!

晴日ちゃんは私のことをきょとんと大きな丸い瞳で見ていて、その表情がたまらなくかわいい。

表情だけではなく、そのぷっくりほっぺも小さな手も腕も足も、全てがかわいい!

会っていない間に晴日ちゃんは完全に首が座ったようで、お姉ちゃんの胸の中でご機嫌よく腕や脚を上下に動かしたりしている。

そこに伸びてきたのは喜多村さんの手で、晴日ちゃんはその指を小さな手できゅっと握り締めた。

男の人の手と比べたら、晴日ちゃんの手はさらに小さく見える。


「ほんっと、晴日は世界一かわいいよなー!」

「やっぱりお姉ちゃんの遺伝子をしっかり引き継いでるだけありますよね~!」

「ちょ、待て待て待て!俺の血も引き継いでるからこそのかわいさだろー!?」

「えー?晴日ちゃんのかわいさはどう考えてもお姉ちゃんの血のおかげですよ~!喜多村さんの遺伝子はきっと内部に引き継がれてますって!ほらっ!この人懐っこさとか!だから安心してください!ねっ?」

「げっ、高橋、マジかわいくねぇ!そんなこと言うやつには晴日抱かせてやんねぇ!」

「えっ!酷い!」


喜多村さんは大人げなく、お姉ちゃんの腕の中から晴日ちゃんを抱き上げ、デレデレの表情を晴日ちゃんに見せる。

晴日ちゃんはというと、喜多村さんのことは気にせず「あー、うー」と声を出しながら、お姉ちゃんに向かって手を伸ばしている。


「俊くん、ちょっとの間、晴日のこと頼んでもいい?」

「あぁ。任せとけ!」

「小春も遊んであげて?真野さんも是非」

「うん!喜多村さん、お姉ちゃんもこう言ってるし、後で私にも晴日ちゃんのこと抱かせてくださいね~」

「仕方ねぇなぁ」

「やったぁ!」

「じゃあ、よろしくね」


そう言って部屋を出ていくお姉ちゃんの姿を、晴日ちゃんは喜多村さんの胸の中でじ~っと見ている。

平日はお姉ちゃんとふたりで過ごす時間が長いだろうから、やっぱりお姉ちゃんといる方が安心するんだろうな。

 
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