口の悪い、彼は。
 

「ねぇ。この子がお嫁に行く時、千尋泣くのかな?」

「あ?」

「でもね、大丈夫だよ?明良とこの子がここを巣立って行っても、千尋のそばには私がずーっといるからね!」

「……あっそ」

「ふふっ!じゃあ、お姉ちゃんたち出迎えてくるね!」


私の言葉に千尋は呆れたようにため息をついたけど、拒否されなかったことが嬉しくて私の顔はにやけてしまう。

にやけた顔のまま、体はさすがにそうはなってくれないけど、気持ちだけはルンルンと足取り軽く、私は玄関へと向かった。


「明良~お待たせ!ごめんね!」

「おせぇんだよ~。ったくぅ~」

「もう。また千尋の真似しちゃって。そんな言葉ばっかり言ってたら晴日ちゃんに嫌われちゃうかもしれないよ~。いいの?」


ぽんっと明良の頭に手を乗せると、明良は上目遣いで私のことをじっと見てくる。

人のことをまっすぐ見るところは千尋譲りだ。


「そうなの?でもおかーさん、このまえおとーさんにいわれてにこにこしてたし、おとーさんのことだいすきなんでしょ?」

「!やだ~、明良ってば!そんなこと言わせるなんて、おませさんなんだからっ!」

「おませさんって、なぁに?」

「えっとね~」


明良の疑問に対して、何て説明すればいいんだろう?と思いながら、玄関のドアを開けると。


「あっ!いらっしゃい!」


そこにいたのは予想通り、喜多村家の4人……お姉ちゃん、喜多村さん、晴日ちゃん、そして、お姉ちゃんの胸の中には一希(かずき)くん。

一希くんはお姉ちゃんと喜多村さんとの間に4ヶ月前に生まれた、私のお腹の子と同学年になる男の子だ。


「こんにちは」

「こんにちはぁ~」


お姉ちゃんと喜多村さんが玄関先に顔を出した私に向かって挨拶をすると、それに続いて、にこっと笑った晴日ちゃんが礼儀正しくぺこっと頭を下げて挨拶をしてくれた。

晴日ちゃんは会うたびにすくすくと大きくなっていて、ほんわかした性格だけど小学校ではお勉強もスポーツも得意で一目置かれているらしい。

さすがお姉ちゃんと喜多村さんの娘ちゃんだ。

 
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