口の悪い、彼は。
 

「知夏、一希を任せてもいい?」

「うん。大丈夫だよ。ありがとう」


お姉ちゃんと喜多村さんが頷き合うのを見た後、私は一希くんのほっぺをつんとつつきながら挨拶をすると、一希くんはくりっとした大きな瞳で私を見てきた。


「絶対に美形になるよ~、一希くん!」

「ふふっ、それ、何の予言?小春ももうすぐでしょ?大丈夫?」

「うん!まだまだ出てくる感じはしないんだけど、明良っていう前例があるからね~。また千尋慌てさせちゃうかな~。むふふ」

「やぁね、ニヤニヤしちゃって」

「滅多に見れない姿だったから、思い出すたびににやけちゃうの」


5年前の明良の出産の時は予定日が迫っても全く出てくる気配がなくて、ちょっとお腹が痛いかなーと思いつつのほほんとウインドウショッピングをしていたら、突然陣痛に襲われたのだ。

病院に電話して行ったら、陣痛で待機していた他の妊婦さんを差し置いて即分娩室行きで、ものすごく痛かったけどあっという間に明良が生まれた。

産婦人科の先生いわく、予兆はあったでしょ、ってことだったんだけど、ちょっとお腹が痛いと思っていたのがそれだったようだ。

慌てて駆けつけてくれたらしい千尋には、明良を産んですぐの疲れている時に「鈍いからだろ」とか何やかんやと言われてしまった。

でも普段よりも何倍も多い言葉数や内容、そして表情からは私と明良のことをたくさん心配してくれたことが伝わってきて、すごくすごく嬉しかったんだ。

……まぁ、千尋が何やかんや言っている途中で、私は寝ちゃってたんだけど。


明良が赤ちゃんだった頃はやっぱり千尋のあやし方がすごくうまくて、明良が泣いてしまっても、百発百中ではないとは言え、千尋は私が泣き止ませるまでの時間の半分で泣き止ませてしまうことが多かったから、私は悔しい思いをたくさんした。

もちろんその半面、すごく助かっていたことは言うまでもないけど。

千尋は何だかんだ言いながらも子育てには協力的なこともあって、明良はすっかりパパっ子だ。

 
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