The Fool−修正版−
「…………っぐ……」


ガリさんの力が強くなる。


「昔も、今も、『自分は弱い』と思っただけ。それじゃあ何も変われねぇ。楽して力を手に入れたもんは自分の力に溺れる。多分今も『まだ能力が現れないのは時期が来てないからだ』と思っている。それまで護ってもらおう……そうとも思っている」


「だっ…て…そうしないと死んで……」


「思い出してみろ。最初に能力が発現した奴らの時、何があった」


バルト達が能力発現した時、それはインセキメラが数体攻撃を仕掛けた時だった。


奴らに殺されそうになったのはそいつらの近くにいたバルト、マハ、フィード。


「次に能力が発現したのはライ。あいつは絶体絶命の時に発現した。エレボスも同じだ。その点、お前はどうだ?死ぬと感じたことがあるか?」


ない。


全て、誰かが助けてくれると思っていた。


クレスたちの攻撃で動けなくなった時も。マルスの攻撃を受けて閉じ込められていた時も。


「信じすぎだ。馬鹿者。友を信じるのはいいが、友を待って何もせずに死んでしまったら元も子もない」


「…………」


「そして、誰かがなにかしてくれるからと自身は何もせず、怠惰の人生だ。数ヶ月というのは短いようで弱体するには長すぎる時間だ」


「死んだら……恐いじゃないか……嫌じゃないか……」


「死ぬのが恐いか……んなもん誰だって恐い。火事場の糞力ってもんしらねぇのか?生きたいからこそ力を発揮すんだ……それにお前は『感情が力になったらどれだけいいだろう』って言ったな………恐怖だって感情だ。お前はそれをただ、逃げる為だけに使ってたに過ぎない」
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