風が、吹いた



「待って!」




目の前には、白い天井。



私の手はそこに向かって伸びて、何かを掴もうとしている。



相変わらず殺風景な私の部屋。



カーテンの隙間から朝の光が射し込んでいた。




「…夢、か。」




リアルな夢だ。何度も何度も、昔は繰り返し見た夢。


この記憶だけは、廃れることを知らず、かといって輝いてはくれない。



顔を手で覆うと、生ぬるい感触が肌を伝っているのがわかった。




「泣くなよ、自分。」




呆れたような声を出す。



泣いたら、負けだ。
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