風が、吹いた
「おはようございます。寒いですね。」
先輩もうんと頷く。
いつもはひとりで走っていたこの道を、今は自転車ふたつで通う。
不思議な交友関係は、こんなふうに続いている。
車が来ないときは、2人で横に並んだ。
ちらっと隣を見ると、先輩は鼻の頭までマフラーで覆っていて、本当に寒い様子だ。
「朝からあっつーいコーヒー飲んできたのになー。意味なかったなー。」
恨めしそうな目を、冬の空気に向けながら、先輩がぶつぶつと文句を言っている。