風が、吹いた




「………なんか、いつの間にか、2人とも、近くなってない?僕のこと置いて」



椎名先輩が帰って、お客さんに注文されたものも出し終わり、落ち着いた時間が流れる頃、佐伯さんが口を尖らせてそう言った。



カップを布巾で拭いていた私は、危うくそれを落としそうになって。



「ちょっと…突然変なこと言い出さないでくださいよ」




佐伯さんのことをじろっと睨んだ。




「だってさ、こないだまで、2人とも入れ替えの時間、よそよそしかったじゃん。孝一くんは17時半まで勤務なのにさ、ちょっと早めに上げて欲しいとか言っちゃって、千晶と会うこともなかったでしょ。あれ、完璧避けてたし」




佐伯さんは私を見ることなく、新しく仕入れた豆のブレンドを考えているのか、カウンターでメモ用紙に書き込みながらぶつぶつと呟く。




「若いっていいよねー」
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