風が、吹いた




「僕はどうせ、若くもないよねー」



こんな佐伯さん、今まで見たことがない。そんなに仲間外れが嫌だったのかと内心焦り始める私。



「そ、そんなことないですよ!」




拭きかけのカップを一度目の前の台に置いて、体ごと佐伯さんの方を向く。




「…なんてね。」




ちらとこちらを見た佐伯さんの、眼鏡の奥にある目が笑っている。



「え!あー!」



途端にからかわれたのだと理解した。




「もうっ。冗談やめてくださいよ、ほんと。私の中の佐伯さんのイメージが崩れちゃうじゃないですか」




頬を膨らませて抗議した。
< 177 / 599 >

この作品をシェア

pagetop