風が、吹いた


温かい言葉に、胸がチクチクと痛む。




「忙しかったからねぇ。ほんとに、ふたりには悪いことしたね。」




腰に手を当てて、ふーと息を吐きながら言った佐伯さんの言葉に、私たちふたりは首を横に振った。



「いや、俺は楽しかったですよ。新郎新婦も幸せそうでしたし。」




先輩の声を聴くだけで、ドキっとする。



病気みたい。



私は、誤魔化すようにコーヒーを流し込んだ。




「で、実はちょっとまだ色々日曜日はやることがあってね。帳簿をつけなきゃならないんだ。」




申し訳なさそうに、佐伯さんが手を合わせる。




「ごちそう作ろうと思ってたんだけどなぁ」




夕飯を準備してくれようとしていたらしい。




「そんなの、いいですよ。いつもお世話になりっぱなしなんですから。」




先輩の言葉に、私も頷く。


早く帰って頭を冷やす。これが今の私の最優先事項なので大賛成です。
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