風が、吹いた
「私だって、コーヒー淹れるくらいできますよ。」
口を尖らせながら言うと、佐伯さんはまた笑って。
「だって一緒に働くのに千晶が気に入らなかったら、かわいそうだから。千晶が面接してあげてよ。」
「…分かりました、でもお客さんが来なかったら佐伯さんが面接して下さいよ?」
「うん、分かったよ。」
と言う話し合いが行われたにも関わらず。
カランカラン
状況は佐伯さんの肩を持った。
不運にも、カップルのお客が来て、佐伯さんは接客へ。
そして、直ぐにまた、金のベルが鳴る。
「千晶、いい?」
カウンターから佐伯さんの声がして、休憩室の椅子に姿勢悪くもたれかかっていた私の背筋がぴんと正された。
「…はい。」
緊張しながら返事をして、休憩室に入ってくる足音の主を待つ。
ガチャー
「よろしくお願いします」
「………」
穴があったら入りたかったし、逃げていいなら無人島にまで逃げたかった。
礼儀正しく挨拶をして入ってきた人物はー
先客=3年=椎名先輩、その人だったから。