風が、吹いた
「とりあえず、、、ココア、飲みます?」
私の頭を働かせるためにも必要なので提案してみれば。
「うん」
彼はにっこりと頷く。
数分後。
湯気の立つ、カップを前にして。
「冬の朝って、なんか空気が新しい気がするよね」
私は、朝から敬語を注意され、国語の教科書に載っているような文章を言わされている。
「千晶は、固いんだよなー。もっと自然に。」
なんでこんな朝っぱらから、こんなことになってるんだろう。
きっと、誰にもわからない。
「そういえば」
気がついたように、椎名先輩が部屋を見渡した。
「千晶の家には、テレビがないね」
「…先輩の家にもないじゃないですか…じゃない、ないじゃん」
自分で敬語云々言った本人が、笑いのツボに嵌っているのは、腹が立つ。
「千晶、どこか行きたい所、ある?」
笑いが収まり切らないまま、先輩が訊いた。