風が、吹いた




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「え、それ、まじっすか?」




灰皿用のダストボックスから網で煙草をすくい、スタンドにあるゴミ袋に入れていると、店長とマネージャーが話している声が聴こえた。




「らしいぜ。カルモの店主のもんなんだってよ」




奥にいっぱいになったゴミを運ぼうと、傍を通り過ぎる。




「すげぇなぁ。やっぱ金持ちなんだ。3丁目の森といい家といい、良いもんだし、場所も一等地だし。知ってます?あそこ白い家だからお城と引っかけて、近所から森城って呼ばれてるんすよ」




ははは、と2人で笑い合っている。



その2人が、傍で固まっている俺に気づいて、ん?と首を傾げた。




「どうした?椎名。」




「あ、いや、なんでもありません」




ペコリと頭を下げて、すぐにその場から離れた。
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