風が、吹いた



そんな私を見ながら、彼の表情も柔らかさを増して。



「…長い、、、夢を、見ていたんだ…」




静かに、少しずつ、言葉を発した。



時々傷口が痛むのだろう。呼吸が浅くなる。




「桜の木の下で…俺は、女の子に出逢うんだ…」




私は頷きながら、もう止めることを諦めた涙を落とす。




「その子は…同じ学校に通っていて…俺はいつも追いかけようとするんだけど、、どうしても追いつけなかった…」




私と繋ぐ手とは反対の手をゆっくりと宙に出すと、それで私の頬を優しく撫でた。




「最初は、見てるだけでよかったのに…どんどん欲が出てきて…傷つけるとわかっていながら傍に居たくなった…」






そこまで言うと、少し疲れたように、息を吐いた。




「置いて行きたくないのに…置いていかなきゃならない自分に腹が立つんだけど何も出来なかった。…だけど夢の中では、ちゃんと言えたから、女の子は笑ってくれたんだ…」




だから、と彼は私を見つめる。




「絶対に…千晶に次に逢った時には…必ず一番最初に…伝えようと思った…」




頬に触れている手で、私の涙を掬うと彼はふわりと笑った。

















「俺は、君が欲しい」
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