風が、吹いた

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「真紀子様…、医者を呼んできましょうか?」




沢木が、ドアの前で、花瓶を手に持って立ち止まったままの女性に尋ねる。





「…いいえ。暫く、、、そっとしておいてあげて…」




にっこりと優しく、少し寂しげに彼女は微笑むと、




音を立てないように、少し開いていたドアを、静かに閉めた。







春の訪れが、


確かに、


近づいていた。
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