風が、吹いた
「浅尾」
2階に下りた所で突然止まった私に、浅尾がぶつかりそうになったらしく、
「突然止まるなよ…」
と驚いたように、呟く。
「昨日、ありがと。助かった。」
振り返って目を合わせて言うと、彼はもう一度驚いたように、目を軽く開いた。
「いや、大したことしてねぇし。」
一瞬照れた様に見えたけど、浅尾が私の顔を前に向けさせたので、もしかしたら気のせいだったのかもしれない。
がやがやと騒々しいはずの3年生の廊下は、受験が迫っていることもあるのだろうか、思っていたよりも静かだった。
私がきょろきょろと見回していると。
「椎名先輩捜してんの?」
と後ろから浅尾が訊いてきた。
「んー、いや別に。。。っていうか、友達って、どーいう感じなの?」
質問で返すと、浅尾の顔にハテナの文字が浮かぶ。