君と奏でる音[前編]
ところがとあるコンクールの日、母さんは私に向かって走ってきた車に跳ねられた。
私をかばって。
一緒に吹き飛ばされた。
でも病院で目がさめたのは私だけ。
母さんは私が目覚めて数時間後に他界した。
一つの楽譜を手に残して。
それがこの曲。
『メンデルスゾーン/春の歌』
母さんがその日に弾くはずだった曲。
母さんが私に残した遺産。
だから私は弾くの。
母さんの意志を継いで、母さんのようなピアニストになると。