聖夜は恋の雪に埋もれて
 悩み続けつつ、窓の外に何気なく視線を送っていた私の目に、見知った二人の姿が飛び込んできた。
 奏と瑠璃!
 二人はこちらには気づかない様子で、何やら話しながら歩いている。
 まさか、瑠璃は、奏と一緒に下校中?
 そして―――。
 奏が笑うのが見えた。
 瑠璃は終始、笑顔のままだ。
 そんな……。
 ショックのあまり、何だかくらくらしてくる。
 そして、自然と言葉が口をついて出た。
「うん、いいよ。明日、よろしくね」
「おおっ、ありがとう! 俺、こんなに嬉しい思いをするのは、久々だなぁ」
 朗らかな笑顔を見せる鉄平君。
 奏と瑠璃は、きっと明日のイブも一緒に過ごすんだろう……。
 私にはどうすることもできない。
 あの光景にショックを受けて、ついつい勢いで、鉄平君のお誘いをオッケーしちゃった。
 それに、ここまで熱烈にお誘いしてくれてるのに、断りにくくて。

「じゃあ、明日、5時にこのお店でね。俺、ちょっと4時半頃まで用事があるんだけど、絶対5時にはここに来るから、待っててね。そうそう、17番テーブルに予約を入れておくよ」
「えっ、前日なのに、予約入れられるの?」
「ふっふっふー。麗は、俺がどこでバイトしているか、忘れちゃった? しかも、俺、バイト長だし」
 バイト長……あのお店の中で、かなり偉いみたいに聞こえる。
 高1なのに、すごいなぁ。
「え~、職権乱用じゃないよね? 大丈夫?」
 気になって聞いた。
「大丈夫だってば。そんなことより……麗、しっかり覚えておいてよ。午後5時、17番テーブルだぞ」
「うん、了解」



 それ以降は、雑談をして過ごした。
 ……ほんとにこれでよかったのかな。
 奏……。
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