狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

ふたりの色男

廊下に出ると、相変わらず女子生徒に囲まれている男たちの姿がある。右側にセンスイ、左側にアラン。


「色男は大変だねぇ…これじゃあ休まる時間もないってもんだよ」


幸いミキは友人>色男の考えの元にあるようで、こうしてアオイやシュウと行動を共にしてくれている。


しかし…ここで問題が発生してしまった。


「ほんとだね…」


わずかに同情の念を抱いたアオイは、うっとおしそうに顔を上げたアランと目が合ってしまったのだ。


「……」


アランは黙ってこちらを凝視している。
いつもキュリオが何か言いたそうにしているときの眼差しとまったく同じものだ。


(…絶対お父様よね、どうして黙っているんだろう…まさか他人のそら似?お父様の弟さん、とか…?)


「でも、そんな事聞いたことないし…」


ブツブツとアオイが独り言をつぶやいていると、


「アオイさん」


聞きなれた優しい声がかかった。


「センスイ先生」


穏やかな笑みを浮かべたセンスイが女子生徒をかき分け、アオイの元にやってきた。


「顔色もだいぶいいようですね。体調が思わしくない時はいつでも保健室にいらしてください」


さらりと流れる動作でアオイの頬を撫でるセンスイ。


「…あ、ありがとうございます」


(センスイ先生の手、すごく落ち着く…ずっと触れていて欲しいような…)


思わず頬擦りしてしまいたくなる彼のひんやりとした手。


「…っ…!!」


二人のその様子を睨みながら忌々しそうに耐え、堪えているアラン。


「どうしたのアラン先生?」


アランの視線を追ってセンスイらの姿を見つけた別の女子生徒が呟いた。


「そういえば…アオイってセンスイ先生と急接近したよねー…ってシュウかわいそーー!!」


『ちょっとあんたいいの!?マジでアオイとられちゃうよ!!』


気を利かせたミキがシュウの背中を小突くと…


「さっさといくぞアオイ!!」


「えっ!?きゃぁっ」


やや姿勢を落としたシュウはアオイを肩に担ぎ、ミキの腕を掴むと全力疾走でその場から逃走したのだった―――


「まったく…小賢(こざか)しい屑ですね」


先程までの笑みは微塵も感じられぬセンスイの横顔。そして、そんな一面があるなどとはまったく疑っていないアオイ。果たしてどちらのセンスイが本物なのか、学園外で逢いたいという彼の目的は一体なんなのだろうか…?

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