狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

アランの言いなり

「アラン先生どっこっかっなーっ♪」


鼻歌交じりにアランを探し始めたミキ。


すると…やれやれと言った様子のミキがため息をもらした。


「探さなくてもすぐわかっちゃうのが罪よね…」


またも人だかりが出来ており、制服のリボンがグリーンとブルー。1年であるアオイたちはレッドのリボンなのだ。そしてそのことから群れている彼女らが2~3年生であることが伺える。


「はぁ…教室から出ればアラン先生を独占出来るって思ったけど…」


「増えちゃってる、ね…」


近づけそうにない人の群れに二人が呆気にとられていると…


「アオイさん!」


長身のアランが先にこちらを見つけ、にこやかに手を振ってくれた。

輝く笑顔を向ける彼の手には、品のある布に包まれたジルお手製重箱弁当が握られている。



「アラン先生、お待たせいたしました」


女子生徒たちの視線を一身に受けながら、アオイとミキは彼の元へと駆け寄っていく。


『ここは人が多い…飲み物を買って別の場所へ行こうか』


『わかりました』


耳元でそう囁いたアランは、アオイの背へそっと手を添えると急ぎ足で移動をはじめる。
それからアランは珈琲、アオイはミルク、ミキは清涼飲料水を購入し…椅子やテーブルもない中庭の一角へとその身を隠す。


「二人とも、こんな場所で悪いが…足は痛くないかい?」


ようやく腰をおろした三人。
そしてやっとミキへの気配りも見せたアラン。すると隣では嬉しそうにはしゃぐミキの姿がある。


「アラン先生とランチ出来るなら全然っ!!全然痛くありませんからっ!!」


「君は元気な子だね。あぁ…アオイさんはその上に座りなさい」


膝を怪我しているアオイを気遣い、懐(ふところ)から純白のハンカチを取り出したアランは大きな石の上にそれを敷き、座るよう促した。


(綺麗なハンカチが汚れてしまう…でも…)


「何からなにまですみません先生…」


ここでアオイが拒否したところでアランは許してくれないだろう。
いつものキュリオならば、己の膝の上にアオイを座らせているところだからだ。

一度立ち上がり、丁寧にスカートをはたいたアオイはアランのハンカチの上に腰を落ち着けた。


「あぁ、それでいい」


大人しく従った彼女にアランは満足そうに頷いている。


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