狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

心配事

心ここに非ずといった様子のアオイはいつの間にか城の前まで来ていた。


見上げた壮大な悠久の城はこの日も変わらず淡い光を放ちながら、悠久の地を優しく照らし続けている。


例え、月の見えぬ夜…その心が雨音とともに暗闇に飲み込まれてしまいそうな時も、この城は人々を導く道標のようにいつの時代も光輝いているのだという。


(…私はお父様の欠片にも満たないわずかな時しか生きていない…)


その中でも彼の偉大さが十分伝わってくる。力のない民たちを守り、国が傾かぬよう統治するのは簡単な事ではないはずだ。歴代の悠久の王たちが愛したこれらを支えるには、王が偉大でなくては到底務まらないのだ。

そして何よりも…悠久の人々や動物、そして聖獣から大自然に至るまで、絶大な信頼を得ているキュリオを見れば…彼の働きが、いかに素晴らしいものかが容易に想像することができる。


(…なのにどうしてセンスイ先生たちに冷たくあたるような事…)


アオイは気づいていない。
自称・アランのそれらの言動や行動の原因は、すべて自分にあるのだということを―――…


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