狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

アレスの願いとアオイの心Ⅱ


そして視線を下げた際、彼女の膝にある丁寧に巻かれた包帯をようやく目にしたアレス。


「…アオイ様の表情が思わしくないのは…もしかしてこの怪我に何か関係があるのですか?」


アレスの視線につられ、センスイが手当してくれた真っ白なそれを瞳にうつしたアオイ。



「あ…」



"…包帯、ご自分で取り替えたりなさいませんように。明日も空き時間にお待ちしております"



(…センスイ先生との約束…)



まるで決別してしまったかのような…昼間のセンスイの冷たい眼差し。悲しみに暮れるアオイだったが、藁(わら)にもすがる思いで…いくつかの彼との約束を守ろうと本能が働いた。


そして傷の具合を確かめようと、膝をついて手を伸ばしてきたアレス。



「…っだめ…アレス、この包帯には触らないでっ!!」



「…え?…なぜです…?」



激しく拒絶の意を見せたアオイは、アレスと距離を置くように後ずさりした。


アオイ付きの彼としては、やはりどんな些細なことも把握しておきたいらしい。そして天才魔導師と謳われるアレスがアオイの身を任された意味もここにある。



―――キュリオ不在時、彼の代わりとなり彼女を力の限り守る事。



それはいつしか使命ではなく…まったく別のものへと変化していくのだった。


詳しい事情を知らぬアレスは驚いたように動きを止めたが…知的なその瞳が鋭さを増し、再び動き出した。



「…いいえ、アオイ様の身をお守りするのが私の役目。キュリオ様ならこうなさる…を考えて私は常に行動させていただきます」
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