狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
「カイッ!! 追いかけてはならんっっ!!」


大急ぎで馬にまたがるカイを叱咤したのは大魔導師ガーラントの制止する声だった。


「……っなぜっ!! アオイ様が連れ去られてしまったのですよっっ!?」


「ばかもんがっ!! おぬしもあやつの力を見たであろうっ!! 戦いを挑んで死ぬつもりかっっ!!!」


ガーランドが握る古木の杖で思い切り頭を殴られるカイ。


「少しは冷静にならんかっ!! これだから剣士というやつらは……っ!!」


知性で遥かに上回るガーラントら魔導師が集結し、早くも何か策を立てている様子だった。


「……いってぇっっ!!!」


馬上で頭を押さえるカイを横目で見ながらアレスは大魔導師に指示を求めた。


「……ガーラント先生、キュリオ様の所存は未だ不明でございます。こちらの合図に気が付いてくださるとよいのですが……」


「うむ……。姫様の傍におらぬ今のキュリオ様なら尚の事、城からの合図には敏感になっておられるはずじゃ……」


「……私もそう思います」


「よし……時間がない決めるぞ! ……魔導師は銀の光弾と赤の光弾をそれぞれ打ち上げよっ!! 今すぐにじゃっっ!!!」


「はっ!!」


ガーラントのいう銀の光弾、すなわちこれはキュリオを意味している。そして赤の光弾は…危険を伴う緊急事態発生。


この光弾が城で打ち上げられれば、アオイの身の危険を感じた彼はどこにいようともすぐに姿を現すはずだからであり、もっとも有効な方法と言える。


「打ち上げ準備完了でございますっ!!」


皆から距離をとった二人の魔導師が両手を掲げ、ガーラントの指示を待っていた。



「構わんっ! 打てぃいっっ!!」



―――ドォオオンッ!!




大魔導師の声と共に、銀と赤の光弾が華々しく夜空に打ちあがった。巨大な轟音が空気を伝い、あたり一面の木々を揺らした。


(キュリオ様っ! どうかお早く……っ!!)


すると…


「……俺っ! アオイ様を追います!! 消えた方角はわかってるっ!! 途中でキュリオ様と会える可能性だって十分にあるはずだ!!」


「あぁ、頼んだぞカイッ!!」


アレスもガーラントも大きく頷くと、走り出した勇敢な剣士と幼い姫が無事に戻る事を祈った。


「……ガーラント先生、あのセンスイという男……一体何者でしょう」


「わからん……ただ……やつがおぬしの術を破った時の異常なまでの力は儂も感じた」


「……はい」


「妙な胸騒ぎがする。もし……あんな者が複数おったとしたら……」


「…………」



「キュリオ様ひとりの手に負えぬやもしれんぞ」



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