君の名を呼んで 2
私は苛立たしさを隠しもせずに相手に話しかけた。

「どうだったの?言われた通り、あのカフェの前まで城ノ内さんに送ってもらったけど」

『ああ、ちゃんと見たよ。雪姫とね』

私の共犯者ーー月島要は電話の向こうで笑う。

『城ノ内さんも俺と雪姫の姿を見たし。考えてたのとは違ってたけど、まあまあ上々かな』


ーー私は彼の指示で城ノ内さんを遅くまで引き止め、彼に送って貰った。
月島要に言われた通り無理にお願いして助手席に乗って、カフェの前で兄が迎えに来るからと嘘をついて降ろしてもらった。
その時に偶然を装ってカフェに梶原さんに似た人がいる、だなんて彼の注意を引くことも忘れず。
けど、ただそれだけ。


「ほんとに上手くいくの?」

『一つ一つは下らなくてもいいんだ。小さな亀裂や疑いが積もれば、取り返しのつかないことになる。
あの人も何かを隠してるみたいだし、うまくこじれたら一気だ。まあ見てろよ』


月島要は私より余程、相手を手に入れたいみたい。
梶原さんが少しだけ気の毒。

『次も上手くやれよ。アイドルさん』


電話を切って、ベッドに倒れこんだ。
落ち着かない、休まらない。
味方の居ない家。


「城ノ内さん……」

私は一人、呟いた。
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