君の名を呼んで 2
***


「わー!美味しい!」

「だな。やっぱココにして正解」


待ちに待った有給休暇。
私と皇は旅行に来ていた。

海外や遠出をするより、移動時間は短くして思いっきりゆっくりしようと、都心から高速で二時間ほどの温泉地。
けれど忙しい私達には新鮮だった。

観光名所もそれなりに回って、美味しいものを食べて。
始終御機嫌な皇は指を絡ませて私と手を繋ぐ。
いつもより口数も多いし、優しい気がする。

それが嬉しくてついつい私も甘えてしまう。


「早めにチェックインするか」

「露天風呂!楽しみ~」

ニコニコと言う私に、皇がニヤリと笑って顔を寄せた。
わざとらしくゆっくり、囁く。


「言っとくけど、露天風呂付きの部屋だからな?大浴場に行かせる暇なんかやらねぇからな」

そ、そ、それは。
どういう意味だと顔いっぱいに浮かべて、けれど聞くのも怖くて引きつった顔で彼を見れば。
皇はご丁寧にも解説してくれた。

「一緒に入るって意味」

「えぇっ!?」

「んで、のぼせるまで可愛がってやる」

「ぎゃあっ!?」

思わず真っ赤になって彼を見上げたなら、皇は楽しげに笑う。
わかってたけど、この人。い、意地悪だ。

「家でも一緒に入ることあるだろ。何を今更」

「それだって相当恥ずかしいんですよ!」

彼を押しやるように抗議するけど、

「楽しみ」

なんて色気に満ちた視線で言われたら。

「……そーですね」


ハイ、降参です。
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