君の名を呼んで 2
初恋くらい、いいじゃない
***

「おはよ~雪姫ちゃん」

翌朝、私の車に乗り込んだのは、女優、藤城すず。
18歳にも関わらず、その実力は広く認められつつある、
私の担当女優にして妹みたいな存在。

頑張り屋さんで、素直な彼女は私の事もすごく慕ってくれてて。

「ああっ、雪姫ちゃん目の下にクマが!またあの鬼畜副社長に寝かせてもらえなかったの?あのヤロ、あたしの雪姫ちゃんにい~!!」

「そ、その鬼畜は私の旦那様なんだけどね?」

というか、清純派女優らしからぬ発言は止めて欲しいわ。

「すずこそどうなのよ?」


すずはうちの看板俳優、二ノ宮朔と最近つき合い始めた……ようなんだけど。

「に、二ノ宮先輩は……読めない。誰かあの人の演技を見抜く攻略法とか呟いてないかな」

スマートフォン片手に検索を始めるすず。

「載ってたら困ります、そんなもの」

「だよねぇ。二ノ宮先輩、弱味握られたりしなさそうだもん、ちぇっ」


普段紳士的で王子様な朔は、すずだけにはS王子らしく、がくっと肩を落とす彼女が可愛くてつい笑ってしまう。
朔もすずのこういうとこ、気に入ってるみたいだし。
なんだか親みたいな心境で見守ってしまうわ。


「それはそうと雪姫ちゃあん?その首のスカーフはぁ、もしかしてまた、旦那様の仕業かにゃ~?」

「知りません」

ニヤニヤからかうすずに、かろうじて赤い顔を隠す。


……そうですとも。
性懲り無く、痕を残してくれちゃって。


私の表情に、すずはあーあと溜息をついた。

「真野社長の言った通りだったね。城ノ内副社長ってば、結婚したらますます雪姫ちゃんを独り占めなんだもん」

彼女の言葉に苦笑いしながら。
私達はそのままきゃあきゃあとガールズトークに花を咲かせながら、現場へと向かった。
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