君の名を呼んで 2
「ならこれ、解いて下さいよ!」

私の必死の懇願に、皇はふっと皮肉気に笑った。


「おねだりの仕方、教えたよなあ?」


くッ!!
この、この、鬼畜男め!!
ここで屈したら完全に負けよ、雪姫!
言ってなるものか!

決意を新たにした私を見透かしたように、彼は追い打ちをかける。

「ついでにホン読みしてくるから」

「えええっ!!?」

皇は煙草を吸いながら、ベランダで台本を読むことがある。
そんな事始めたら、30分や1時間は帰ってこない。
ゆ、雪姫、背に腹は変えられないわ。

まだこれから、夕飯作ったり、メイク落としたり、お風呂入ったり、明日のスケジュールと持ち物確認したり、と、とにかくやる事が山積みなんだから。

抑えた声を必死に絞り出してみる。


「ちょっと、待って」

「んあ?」

「……しました」

「聴こえねえな」


ニヤニヤと言い放つ、愛しの旦那様(だったような)に私は叫んだ。


「嫉妬、しましたよ!年下の女の子に、アイドルに!嫉妬しまくりました!!」


はあはあと荒く息をついて。
ああ、やってしまった、なんて皇を見上げたら。


「色気ねえな」


……じゃあどうして、そんなに嬉しそうなの?


「正直に言いました。だから、解いて」

口を尖らせた私の上に覆い被さって、彼は私の服のボタンを外し始める。

「こ、皇……?」

「ご褒美、だろ」


それから私は、ロクに眠る時間も与えられず。


……これも甘い、新婚生活なの、かな?
< 6 / 140 >

この作品をシェア

pagetop