重い想われ 降り振られ
だが真理子の予想とは違い、橘は女性と話をしているようだった。

サングラスをかけ赤い口紅をした細身の女性が、橘の前に居た。

植込みが開けた正面玄関の前までくると、女性が橘に抱き着いているのが見えた。

『えっ?』

真理子は自分の見ている光景を疑った。

女性は橘とキスをしていた。

真理子は慌てて来た道を戻った。

立ち去る真理子の後ろ姿に気付き、橘は焦った。

慌てて女を振り払い、真理子を追いかける。

真理子はどうしていいか判断が出来ずに、傍の公園に入った。

『とにかく落ち着かないと・・・。』

いろんな事が頭を過ぎる。

あんなに真剣に真理子に想いを告げた橘が、そんな事をするはずは無いと
必死に自分に言い聞かせた。

『とりあえず、見なかった事にして・・・。』

ベンチの前で立ち尽くす真理子を橘は発見して、肩を掴んだ。
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