拾った子犬（系男子）は身元不明
１．とりあえず拾う
あー疲れた。


足がもうパンパンだ。


３cmしかないヒールだが、少し酔っているせいか、いつもより足下がふらつく。


大体、世の中の女子たちは、どうしてあんなにも高いヒールで一日を過ごせるのか。


友人が「おしゃれは、我慢だ」と言っていた。そんな我慢私には必要ない。


何事も機能性を一番に考えてしまうこの性格は、誰に似たのだろう。


昔、一緒にセー○ームーンを見ていた母が、「あんなヒールで走ったら、足首ひねるわ」と言っていたのを思い出す。


その時は、意味が分からなかったが、今なら物凄く同意できる。



きっと、私は、その母に似たのだろう。まぁ、２７歳の私より、５０を過ぎた彼女の方が女子度が高い気もするが、それはこの際おいておこう。


どうでも良い事を考えていると、マンションのエレベーターで自分の部屋の階に着いた。


あぁ、後もう少しで愛しの我が家だ。



担当のお客様の家が無事に建ち、ささやかな祝杯をあげて帰って来た。


明日は、最近忙しかった私へのご褒美に、社長が有給をくれた。



小さな個人事務所で、普段は荷馬車のように働らいているが、こういう小さな気遣いが、社長が慕われる所以なのだろう。


ご機嫌な足取りでエレベーターを降りる。
< 1 / 24 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop