拾った子犬(系男子)は身元不明
顔をあげると、目に入ったモノに驚いて、声をあげそうになった。


酔っぱらって、浮かれいたから気づかなかった。


私の部屋の隣の部屋の玄関の前に、何か居る・・・。


微動だにしない黒い塊が、そこにあった。


よく見ると、それは黒いコートを着た、黒髪の人だった。


うずくまっていて、顔を見る事は出来ない。


何事かと思いつつ、なるべく見ない様に通り過ぎようとした。


だって、ここは大都会の東京だ。しかも、もうすぐ日付が変わろうとしている。


2月のこんな寒い中、人のうちの玄関でうずくまっているなど普通じゃない。


彼氏もいない。一人暮らしの私は、変な事には巻き込まれたくない。


カツカツと低いなりのヒールの音が廊下に響く。


ソレを通りすぎなければ、家に入ることは出来ない。


見ない様に・・・見ない様に・・・


呪文の様に繰り返す。


もうすぐで我が家だ!


そう思い、ソレの前を通り過ぎようとした瞬間、私の気配にソレが反応して、顔をあげた。


しまった!!


そう思った時には遅かった。


動いたソレをついつい見てしまった。


しかも、目が合ってしまった。


私は慌てて目をそらし、家の中に逃げ込んだ。
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