拾った子犬(系男子)は身元不明
「じゃあ、忘れんといてくださいね。

 何か、千夏さんって、時間が経つに連れて、俺がお礼に来るのか疑い出しそう。

 そんで、別にお礼に来んでもええとか思い始めるんです。大学が楽しくて、自分のこと何て忘れとるやろうって」


そう思う自分が簡単に想像できて、何も言えない。


「そんなん、あきませんよ。」


夏樹君は、私の手をギュッと握って言った。


「勉強一筋の大学生活送ろ思ってた俺の頭を、こんなにも占領するんやから、千夏さんもちょっとは俺のこと考えてください。」


自分の顔が熱くなっていくのがわかる。


「イケメンにそんなこと言われるなんて、照れるな〜」


恥ずかしくて、誤摩化すように言うと、夏樹君は、眉間に皺を寄せた。


「それ、そのイケメンってのも・・・」


「へ?」


「そのイケメンってのも、千夏さんが俺を男として見てない証拠ですよ。」


「そ、そうかな?」


「じゃあ、千夏さんは、自分の気になる人に、イケメンなんて言える性格ですか?」


「・・・」


そう言われれば、それま無理な気がする。


何で、夏樹君にわかるんだろう。


「まぁ、今は実際ガキやから、これ以上は何も言いませんけど。」


そう言って、私から手を放した。
< 22 / 24 >

この作品をシェア

pagetop