アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]

「わかった、お前に新鮮さを与えてやろう」
突然何を言い出すんだ、こいつは。
「何? 刺身でも頼むの?」
「あ、本当にきたきた、おーい、池内君」

綾瀬の発言を適当に流していると、綾瀬は私の背後に向かって手を振った。
後方を振り返ると、そこには爽やかに笑うそこそこのイケメンがいた。

「はじめまして奈帆ちゃん、池内って言います」
彼は綾瀬の隣に座ると、すぐに私に微笑みかけ爽やかに挨拶をしてきた。
「え、え、なにどういうこと」
「池内という名の新鮮さをやるってことだよ」
「は? だからどういうこと」
わけがわからず眉根を寄せると、綾瀬は池内君を指差して改めて説明した。
「池内も彼女とマンネリしてんだよ。だからこいつとソフト浮気すれば? っていう提案」
「お前はクソだ」

こんなにも汚い言葉をこんなにも真っ直ぐな表情で言ったのは人生で初めてだった。

「はー? ドキドキしたいけど彼氏じゃドキドキできないのが悩みなんだろ?」
「そ、そうだけど、そんなの池内君にも失礼じゃん、利用するみたいでっ」
そう言うと、池内君はにこっと再び笑ってさらさらと手を横に振った。
「あ、その辺全然気にしないで。俺長続きさせるために浮気してる人だからさ」
「さすが綾瀬の友達」
「それ、褒めてる?」
二人そろって考えが腐っている。こんなの断るに決まってる。
私はあまりに馬鹿馬鹿しい提案に怒り、荷物をまとめて帰ろうとした。しかし、それを綾瀬が止めた。
「まあ、とりあえずLINEだけでも交換しろよ。こんなにお前のしょうもない恋バナに付き合ってやってたんだからさ」
な? と少し威圧的な態度で命令する綾瀬に、私は少し戸惑った。

「どんなに新鮮な刺身も、毎日食ってたら飽きる。たまには肉が食いたいなーって思う。それは人類皆同じだろ?」
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