アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「いやいや、よくないよ、こういうの」
「え、なんで、ドキドキしない?」
ドキドキはするけど、違和感の方がはるかに大きい。
「だって彼氏にはもうドキドキできないんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「大好き、とかじゃなくて、もうすでに安定感があるから、って理由だけで一緒にいたりしない? 彼氏はその安定感を慣れと履き違えて、雑に扱ってきたり……」
池内君の言うことが妙に的を得ていて、私は返す言葉を見つけることができなかった。
「雑に扱われてるんだったらさ、その分ドキドキくらい補給しても罰当たらないよ。どうせ彼氏も浮気してると思うし」
「そ、そんなっ……」
「気づいてないだけだよ、男はバカだから、こうやって可愛い子と遊ぶとすぐ調子乗るからね」
「い、池内君……、ダメだよ」
「大丈夫、俺も折戸さんと同罪だよ。それに、ダメなことするのって、ちょっとドキドキしない?」
池内君が私の唇を指でなぞって、立ち上がった。
池内君の顔が徐々に近づいてきて、私は驚いて固まってしまった。
驚いてる場合じゃない、顔をそむけなきゃ。そう思った時はすでに遅く、顎をがっちり掴まれてしまっていた。
ーー嫌だ、千歳さん、千歳さん、千歳さん、千歳さん、助けて。
「……奈帆に触んな」
ぎゅっと口を閉じて目をつむっていると、聞き慣れた低い声が、頭の上に降ってきた。
そこには、とてつもなく怒った様子の千歳さんがいた。
「え、なに、彼氏さん?」
「喋んな、腹立つ」
さすがに動揺した様子の池内君は、すぐに私から手を離した。
私はというと、池内君以上に動揺して、パニック状態になっていた。
「ど、どうしてここに……」
「美琴ちゃんと新宿の魚谷で飲んでくるね、なんてLINEわざわざ送って来るなんて、怪し過ぎんだよ、バーカ。普段こんな報告なんてしないだろ」
言われてみれば確かに怪しさ満天だ……。自分に呆れかえって茫然自失していると、そんな私の腕を千歳さんが乱暴に掴んだ。
「今度こいつに手出したら、お前の内定先割り出して間男の噂流してやるからな」
「……すみません……でした」
「人の彼女にまで手出すなんて、よっぽど猿でヒマなんだな」
死ねこのやろうって、目が言ってる。私は久々に見る彼の怒り狂った表情に、完全に怯え切っていた。
そして、彼に引っ張られる形でお店を後にした。
「え、なんで、ドキドキしない?」
ドキドキはするけど、違和感の方がはるかに大きい。
「だって彼氏にはもうドキドキできないんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「大好き、とかじゃなくて、もうすでに安定感があるから、って理由だけで一緒にいたりしない? 彼氏はその安定感を慣れと履き違えて、雑に扱ってきたり……」
池内君の言うことが妙に的を得ていて、私は返す言葉を見つけることができなかった。
「雑に扱われてるんだったらさ、その分ドキドキくらい補給しても罰当たらないよ。どうせ彼氏も浮気してると思うし」
「そ、そんなっ……」
「気づいてないだけだよ、男はバカだから、こうやって可愛い子と遊ぶとすぐ調子乗るからね」
「い、池内君……、ダメだよ」
「大丈夫、俺も折戸さんと同罪だよ。それに、ダメなことするのって、ちょっとドキドキしない?」
池内君が私の唇を指でなぞって、立ち上がった。
池内君の顔が徐々に近づいてきて、私は驚いて固まってしまった。
驚いてる場合じゃない、顔をそむけなきゃ。そう思った時はすでに遅く、顎をがっちり掴まれてしまっていた。
ーー嫌だ、千歳さん、千歳さん、千歳さん、千歳さん、助けて。
「……奈帆に触んな」
ぎゅっと口を閉じて目をつむっていると、聞き慣れた低い声が、頭の上に降ってきた。
そこには、とてつもなく怒った様子の千歳さんがいた。
「え、なに、彼氏さん?」
「喋んな、腹立つ」
さすがに動揺した様子の池内君は、すぐに私から手を離した。
私はというと、池内君以上に動揺して、パニック状態になっていた。
「ど、どうしてここに……」
「美琴ちゃんと新宿の魚谷で飲んでくるね、なんてLINEわざわざ送って来るなんて、怪し過ぎんだよ、バーカ。普段こんな報告なんてしないだろ」
言われてみれば確かに怪しさ満天だ……。自分に呆れかえって茫然自失していると、そんな私の腕を千歳さんが乱暴に掴んだ。
「今度こいつに手出したら、お前の内定先割り出して間男の噂流してやるからな」
「……すみません……でした」
「人の彼女にまで手出すなんて、よっぽど猿でヒマなんだな」
死ねこのやろうって、目が言ってる。私は久々に見る彼の怒り狂った表情に、完全に怯え切っていた。
そして、彼に引っ張られる形でお店を後にした。