フキゲン・ハートビート
でも、いいな、本当に、いいな、すごく。
いますごくあったかい気持ちになっている。
“あまいたまごやき”というのは、こんなにもいい人たちばかりが集まっている、素敵なバンドなんだな。
洸介先輩、季沙さん。
プロ級においしいクッキーをありがとうございます。
アキ先輩、みちるさん。
高級そうなチョコレートをありがとうございます。
俊明さん。
わざわざバイト先まで届けに来てくださってありがとうございました。
そして、寛人くん。
クリーニング、ありがとう。
ほかにもいろいろ、ありがとう。
「……ありがとう」
ついさっきおかしな最低男がやって来たモヤモヤなんか、もうどこかへ吹き飛んでしまった。
半年前、人生なんてクソだってやけくそを起こしていたけど、出会いの力の偉大さを実感している。
動画サイトで“あまいたまごやき”を検索して、なんとなく流した。
『チル・ビート』
彼らがまだ地元にいたころ、小さなライブハウスで聴かせてくれたこともある、シロウト時代のナンバー。
この曲が、あのころ、どうしてかすごく好きだったな。
「“どうぞお先に、僕はまだここでひと眠りする予定だよ、彼女に届けたい花の名前を思い出すまで”……」
歌詞を覚えているなんて自分でも意外だった。
いっしょに口ずさんでみると、胸のあたりがほっこりした。