フキゲン・ハートビート
……ああ、思い出した。
あれはたしか委員会の帰りだったかな。
ぜんぜんしゃべったこともない男の子に傘を借りて、どうにも居心地悪かったのと、それよりなにより申し訳ないのとでいっぱいだった記憶が、心の隅っこになんとなく残っている。
そう、あたしはあの翌日、お礼を言いに寛人くんのところへ行ったんだ。
返さなくていいとは言われたけど、そういうわけにもいかないし、あの黒い傘も持っていった。
そうしたら、おもいっきりガン無視された。
イヤホンをつけたまま、ちらっとこっちを見ただけで、あいつはあろうことかそのままスルーしやがったのだ。
そして、机に突っ伏して寝やがった。
話しかけてくんな、
と言われているみたいで、もんのすごい腹が立ったんだ。
ああ、そうだ。
あの一連の出来事こそ、あたしが彼に対して苦手意識をもつようになったキッカケだったように思うよ。
思い出すだけでむかむかする。
やっぱりヤなやつだって思う。