フキゲン・ハートビート


嫌がる寛人くんを再びベッドに押しこんだのは、お昼を少し過ぎたころだった。


「ねえ、あたしいったん家帰ろうかな。シャワーとかいろいろ済ませたらまた来るしさ」


アーモンド形の目がじろりとコッチを見上げる。

とたん、それはイヤァな感じにゆがんだ。


「もう来なくていーよ」


言うと思った。


「でも、ゴハンとかどうするの? また食べないの? それに、きょうは絶対安静でいるって約束できる? 勝手にシャワー浴びたりしないって誓える?」

「……うるせーな」

「生活力のなさすぎる自分が悪いんだからね」


それにしても、そうやって心から鬱陶しい顔をされると、少しくらいは傷つくよ。

そんなあからさまに嫌がらなくたっていいじゃないか。


……まあ、さすがにちょっとウザイこと、自分でもわかっているけど。


でも、だって、すごく心配なんだ。

これからまた熱が上がってきたらと思うと、放っておくわけにはいかないというか……。


「……わかった。シャワーも浴びねーし、メシも食う。安静にする。誓う。だから、もういいから、おまえは帰れよ」


胃のあたりをゴッソリえぐられたみたいな気持ちになった。


そうか。

そんな見え透いた嘘をつかなきゃいけないほど、あたしはウザイってことね。

きっとそういうことだね。


なんだ、ウルセェとか、ウゼェとか、わりとまじめに本心だったのかよ。

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