フキゲン・ハートビート
「あ……えー。真島です」
「だろうな」
あ、ですよね。
きっと、着信画面に名前が表示されていましたよね。
「で、なに?」
また、そうやって迷惑そうな言い方をするんだな。
鼓膜を揺らしたかったるそうな声に、せっかく立ち上がりかけていた心はまた、ぽきりと簡単に折れてしまいそうだ。
「……い、いやあ。きのう新奈と飲んでてさー、たまたま寛人くんの話になったから、どうしてんのかなーって急に思い出してさー」
たまたま、とかもう真っ赤な噓だけど、これくらいは許してほしい。
というか、言い訳がへたくそすぎて我ながら嫌になる。
恥ずかしい。
そして、やっぱりスゴイ迷惑そうにされてるし、電話なんかやめておけばよかった。
「アレじゃん、1か月半以上も音沙汰なかったし? 最後に会ったとき病人だったから、やっぱりちょっと気になってたっていうか。でも生きてて安心したよ。忙しいとこごめんねー! じゃあねー!」
「――なあ」
これ以上この一方的すぎる通話に耐えられる気がしなかった。
だからもう切ってしまいたかったのだけど、それを引き止めたのはほかでもない、寛人くんだ。
「いま、どこ? 家?」
「え……うん。家にいるけど……」
「わかった。10分で行く」
そこで電話は途切れた。
わけがわからず、無音のスマホをボケっと5分くらい耳に押し当てていた。
そして、その5分後、ウチのマンションの前の小道に、本当にあの黒い車は停まった。
「え、マジか……?」
というか、コッチは寝起きだよ。
髪はボサボサのドすっぴんだよ!