フキゲン・ハートビート


朝まで飲み明かした。

買ったお酒とおつまみはほとんどなくなった。


はじめは楽しく笑いながら飲んでいたけど、新奈はやっぱり泣いた。

なんか、洸介先輩のこととか、季沙さんのこととか、いろいろしゃべっていたけど、正直あまり覚えてない。


あたしも酔った勢いで寛人くんのことを愚痴った。

新奈はけらけら笑っていた。

そのときもなにか言っていたけど、それも、よく覚えていないや。



「ん~……」


いつのまにか寝ていて、起きたら夕方になっていた。


新奈はいなかった。

かわりにスマホの液晶に光る緑のアイコン。

届いたのは30分前だ。


『夜バイトやから帰るな~! ホンマにありがとう。なんかよー覚えてへんけどめっちゃ楽しかったわ!』

『あと、ヒロトに連絡しぃな。いろいろ気になってるんやろ? まー話の内容はよー覚えてへんけど。笑』


覚えてないんかい。

まあ、こんな話は、全体的に覚えてくれていないほうが好都合だけど。


新奈に『バイトがんばって』と『また飲も』とだけを送り、そのままの流れで電話帳画面を開く。


こういうのは勢いが大事だと思うんだ。


ハ行のところまでスーッとスクロールした。

もうすっかりアプリの文化で、登録してある人数も少ないので、ハンダヒロトはすぐに見つかった。


通話ボタンをタップする。

そう、こういうのは、勢いが、大事だと思うんだ。


「――はい」


それでも、受話器の向こうから聞こえてきた低い声に、すでにもう、どうしたらいいのかわからなくなっている。


久しぶりに聞く、半田寛人の声。

なんか、おかしな感じだな。
こんなだったっけ?

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